宮崎地方裁判所 昭和49年(ワ)72号 判決 1974年7月02日
主文
当裁判所が、昭和四八年(手ワ)第一四号約束手形金請求事件について、昭和四九年二月二八日言渡した手形判決を認可する。
異議申立後の訴訟費用は原告の負担とする。
事実
(当事者双方の申立)
原告は、「本件手形判決を取消す。被告は、原告に対し、金二、六一〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四八年六月一四日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求め、被告は、主文一項と同旨の判決を求めた。
(当事者双方の主張並びに証拠関係)
当事者双方の事実上および法律上の主張並びに証拠関係は、次に附加するもののほかは、本件手形判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。
一、原告
(一)、手形は呈示証券であるから、手形金の支払義務は、手形の呈示を受けて発生し、従つて、手形債務の弁済期日は、満期以降の呈示された日をもつて到来するものと解すべきである。
(二)、被告が所持する本件(二)の手形はいずれも満期に支払場所に呈示されておらず、従つて、本件(二)の手形債務は、被告が市川に対し公示送達の方法によつて相殺の意思表示をしその効力が発生した昭和四八年六月一二日に呈示の効力が生じ、市川の右手形債務は同日弁済期日が到来したものと解すべきである。
(三)、よつて、本件(一)・(二)の手形は、右昭和四八年六月一二日以降から相殺適状にあるというべきであり、従つて、本件(二)の手形債権が時効消滅した昭和四八年五月二七日以前には相殺適状になかつたから、民法五〇八条は適用されない。
二、被告
(一)、約束手形の所持人が振出人に対して有する手形債権の履行期日は支払期日であり、手形の呈示は付遅滞の要件である。従つて、民法五〇六条二項、五〇八条の適用については、手形債務の相殺適状は支払期日を基準にして定めるべきである。
(二)、よつて、本件(一)・(二)の各手形は、時効消滅以前にいずれも相殺適状にあつたことは明らかであるから、被告のした相殺の意思表示は有効である。